下請けから技術開発型のオンリーワン企業へ

7デニールの糸

世界一薄く軽い衣料用の生地『天女の羽衣』を開発・販売をしている天池合繊株式会社の代表取締役社長が天池源受(あまいけ もとつぐ)氏です。天池氏は、中京大学卒業後他の繊維会社を経て、天池合繊(株)に入社し、2002年に社長に就任し現在に至っています。
同社のある石川県七尾市を含む北陸地方は繊維産業が盛んでした。これは年間を通して多湿なため静電気が発生しにくいことに起因しています。1950年代には大手繊維メーカーが進出し、合成繊維の街として隆盛を極め中小の下請け企業も数千社に達しました。しかし、安価な輸入品におされ日本の繊維産業は打撃を受け縮小してきました。
天池合繊(株)の転機は、プラズマテレビ用の産業用資材の作成の依頼でした。ただし、世界で最も細い7デニールの糸を使用するものでした。糸の単位「デニール」は9,000mの糸の質量をグラムで表しますが、7デニール糸の直径は27ミクロンと毛髪の1/5ぐらいの細さです。
天池合繊(株)で試しに織機にかけたところ、デニール糸は切れてしまい、うまくいきませんでしたでした。製品化が成功すれば大きな需要が見込める判断した天池氏は、新たに設備投資を行い様々な試行錯誤を重ね、製品化に成功しました。しかし、発注元の会社が倒産するという不運に見舞われます。

販路を海外へ

発注元を失った天池氏は営業の必要に迫られ、技術力を生かした「服地」の展示会に出品したところ、「天女の羽衣」のようだといわれ高い評価を受け、のちに生地の製品名となりました。しかし、合繊としては高価だったためなかなか売れませんでした。
2006年にイタリア・ミラノの展示会に出品する機会を得てから徐々に海外から注文が入るようになるとともに、自社ブランド「天使の羽衣」としても販売し海外有名ブランドや大手デパートの人気商品になっています。

技術開発型メーカー

天池合繊(株)は高い織物技術を見込まれた各種織物の従来からの請負業務も引き続き行いながら事業の発展を目指しています。
天池氏は、「天使の羽衣」の成功を今後も続けさらに新しい事業を開拓する「技術開発型メーカー」を志向しています。そのため、いままで天池氏が一人で担っている商品の企画・開発力を持った人材の育成が急務と考えています。また、現場で製品をつくる熟練の職人を活用しながら若手職人を育成し人材の繊維部門・染色部門・縫製部門などの再配置も必要になってくると人財の重要性を説いています。