銘建工業株式会社 代表取締役社長 中島 浩一郎
「新しい価値を提供する」
金沢駅前の東広場の「鼓門」には、CLTと略称される木質構造材が使用されています。そのCLTを供給した銘建工業株式会社の社長が中島浩一郎氏です。
中島氏は1952年、岡山県勝山町(現・真庭市)に生まれ、横浜市立大学卒業。1976年、祖父が創業した同社に入社し、2004年から現職についています。
岡山県北部の真庭市にある同社は、顧客に「新しい価値を提供する」ことをテーマに製材、集成材、木造建築、バイオマス、CLTの生産を行っています。そのうち構造用集成材は国内シェア18%、CLTの国内シェア77%、木質ペレットの国内シェア23%といずれも国内シェアナンバーワンです。
余すことなく使う精神
同社では創業時から製造工程で発生する木くずや樹皮をボイラーの燃料として活用し、蒸気を木材の乾燥に使用していました。商用で訪れたアメリカの製材所で、自家発電をしていたことにヒントを得て、1984年に自社の廃材を利用した木質バイオマス発電(175kw)を開始しました。
1997年に1950kWの発電所に更新、2003年には売電事業を開始しました。さらに、2004年には、木くずを材料とする木質ペレットを製造・販売し同社の売り上げを伸ばしました。カーボンニュートラル燃料である木質ペレットは、家庭用の暖房や、農家のハウス栽培用暖房の燃料としても注目されています。
中島氏は、集成材とペレットに続く3本目の柱づくりを進めています。中高層建築、つまりビル建築にも使える高強度で地震や火災にも強い木質新建材・CLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)の生産をすすめ、国内ナンバーワンのシェアとなっています。
今の延長線上に、未来はない
バブル崩壊後、将来に危機感を持った真庭の若手経営者たちが「21世紀の真庭塾」を立ち上げ、塾長となったのが中島氏でした。
「現状の延長線上に地域の未来はない」という共通認識の中で、「できることから」取り組み、2013年に真庭バイオマス発電株式会社を設立、中島氏が社長に就任しました。真庭バイオマス発電所の燃料の木質チップはすべて地元で調達し、真庭市の全世帯分を上回る電力を得ています。
中島氏は、自社のみならず真庭市という地域にも新しい価値を提供し続けています。