武田塾、社長林尚弘が語るフランチャイズの仕組みとは?

授業をしない塾をテーマに掲げ、全国で400の校舎に迫る勢いを見せるのが武田塾です。この400近い校舎のうち、その多くはフランチャイズ経営です。武田塾のフランチャイズの仕組みを作り出したのが武田塾の塾長である林尚弘さんです。林尚弘さんが作り上げたフランチャイズの仕組みとはどのようになっているのか、まとめました。

フランチャイズ展開のきっかけ

武田塾は今でこそ400店舗近くフランチャイズ展開をしており、沖縄の石垣島にも校舎が誕生するなど大活躍を見せています。しかし、武田塾を設立し、数多くの実績と信頼を集めてきたにもかかわらず、8年間で2つの店舗しか設置することができませんでした。林尚弘さんが考えるメソッドは完璧で、逆転合格者を数多く生み出してきた武田塾にとってみれば、明らかに店舗の少なさは異常な状態でした。当時林尚弘さんは武田塾以外にも様々なビジネスを手掛けており、2店舗だけしか作れないのは色んなビジネスに手を出しているからかと考えるようになります。

年商1億円しか稼げない、これでいいのだろうかと思っていた中、ある時塾の経営者たちが集まる会合に参加します。そこで意見交換を行った個別塾の役員に話をしたところ、2店舗で年商1億円という事実に驚かれ、自分たちの塾ですら1つの教室で1億円もの年商を売り上げる校舎なんか存在しないことを指摘されます。当然他の塾にもそのようなところがなく、その会合に参加した人たちと朝まで話をすることになり、すぐにフランチャイズ入りの要望が出されることに。

フランチャイズビジネスをこの時までしたことがなかった林尚弘さんは、この要望に困惑します。しかし、林尚弘さんがやっていた福祉事業で働く幹部に、東進ハイスクールがフランチャイズ展開をしていく様子を見てきた人物がおり、この人であればフランチャイズ展開のノウハウがわかるはずだと考えます。この人からフランチャイズの専門家を教えられ、武田塾のフランチャイズ方針を指摘、その結果、現在では400店舗近い数を誇るようになります。

武田塾のフランチャイズのポテンシャル

塾をフランチャイズ経営で一番気になるのは、客単価の部分です。武田塾と同じような形態の塾に個別指導塾がありますが、個別指導塾の客単価は毎月2万円程度とされています。武田塾の場合は大学受験に関する予備校であるため、その客単価は毎月6万円を超え、小中学生を相手にした個別指導塾の3倍以上の客単価を誇ります。しかも、武田塾では授業をしません。そのため、必要以上に人件費がかからないのが特徴で、売上に占める人件費は2割も占めず、家賃やロイヤリティが発生したとしても、例えば毎月50人の生徒を確保できれば、1店舗あたりの収益は1000万円以上が見込まれます。

フランチャイズに関しては5年契約の自動更新で、開業資金として税抜き300万円がかかります。この300万円はフランチャイズへの加盟金であり、この加盟金の中には研修費と開業サポート費用などが入っています。ちなみに、この300万円という加盟金は某有名個別塾の加盟金と同じ金額で、当初は120万円に設定し、武田塾へのフランチャイズ入りをしやすくしていました。

フランチャイズ当初の指令とは

フランチャイズ展開がスタートし、フランチャイズの専門家に武田塾のフランチャイズ展開を委ねた林尚弘さんでしたが、その専門家から色々な指令を受けることになります。最初の指令は、「ロイヤリティの収入が一定の水準を超えるまでは社員を増やさない」というものでした。この専門家も色々な成功や体験をしており、過去に体験してきた例を見た時、できる限り最初のうちから投資をしないことが大切であると考えていました。フランチャイズ入りをするオーナーが毎月出てくれば出てくるほど、加盟金がどんどん入ってきます。この加盟金で投資をしたくなり、結果的に無駄な投資に終わる可能性が高いことをこの専門家は過去の反省から学んでいました。投資をするにしても安定したロイヤリティ収入があってからでも投資は遅くないという考えがあり、その一定水準になるまで投資をしないよう、釘を刺したというわけです。

■フランチャイズで最初に行った作戦

武田塾のフランチャイズ展開は万全を期したものがほとんどで、すべては裏打ちされた経験や知識によって成り立っていました。いきなりフランチャイズ展開をするのではなく、武田塾はどのやり方であれば成功を収めるのかをシミュレーションし、実験することが大事であるとフランチャイズの専門家は考えていました。そこで林尚弘さんは、当時インターンとして働いていた若手、知り合いの塾の人などに色々なパターンの教室運営を任せることにします。1人は、当時あまりうまくいっていなかった店舗の運営を行い、もう1人は元々運営していた塾の上のフロアに武田塾を作り、またある人は、運営する塾の中に武田塾を併設するやり方をとったりします。その結果、ほとんどのやり方で成功を収めることになり、武田塾のフランチャイズは大成功を収める可能性が高いことを林尚弘さんは感じ取ります。

この時、自分が運営していた塾の上に武田塾を設置した人物は、複数の校舎を自分で持っていたにもかかわらず、その塾を全部売ってでも武田塾のフランチャイズ入りをしたいと懇願します。自分で校舎を運営している場合には当然ロイヤリティは発生せず、収入はそのまま自分の懐に入ります。わざわざロイヤリティを払う立場に成り下がってでも武田塾のフランチャイズに参加したいという方がいたというわけです。のちに自分の塾を売り、武田塾を複数展開することで、武田塾の礎を築くことになります。一方、林尚弘さんが運営してきた校舎を22歳の社員に任せたところ、その社員の方がうまく回すことができ、結果的に本校の生徒数を超える快挙を成し遂げます。

林尚弘さんは運がいい?

結果的に武田塾のフランチャイズ展開はスタートで大成功を収め、元々武田塾のインターンとして参加していた人物は複数の店舗運営を行い、年商10億円以上を稼ぐ社長へと成功します。また、フランチャイズ募集に関しては1人の社員がすべてを切り盛りしており、50店舗あたりまで1人だけで取り仕切っていました。そして、武田塾を大きく成功させた立役者であるフランチャイズの専門家は、林尚弘さんの会社にいた社員の知り合いでした。林尚弘さんの周りにはこれだけ優秀な人材がおり、林尚弘さんの想像以上の結果をもたらしていきます。

最初に実験的にフランチャイズ展開をした際も、先行きがどうなるかわからない不透明な状況で手を挙げており、そこで大きな可能性を見出したからこそ今があるのかもしれません。当時の武田塾には多くのインターン生がおり、そのインターン生もまた自らフランチャイズのオーナーとして武田塾で成功を収めているそうです。林尚弘さんの周りにこれだけ多くの優秀な人材が集まったことは奇跡としか言いようがありません。そして、人件費がほとんどかからないビジネスを生み出せたことも林尚弘さんの力です。400店舗達成はあくまでも通過点であり、500や1000というところまで近づいても不思議ではありません。