筆は道具である

筆は道具である

広島県安芸郡熊野町は戸時代後期から続く筆の生産地として知られています。その熊野町に本社をおく株式会社白鳳堂の社長が、髙本和男氏です。高本氏は伝統のある筆づくりの技術を生かした「化粧用の筆」を作り出し、世界的に高い評価を受け、2006年の「ものづくり日本大賞」内閣総理大臣表彰の受賞のほか数々の賞を受賞されています。
(株)白鳳堂は1974年に創業し、高級化粧筆を中心に自社ブランドと取引先のブランド製品を作成・供給するOEM事業を行っています。

OEMと自社ブランド

同社の創業時は地域全体が書道の筆や化粧品のおまけのような化粧筆をつくる下請けばかりでした。卸業者からの注文の量で仕事が左右され、働く時間が安定せず、収益も不安定で会社の運営も大変な時代でした。
高本氏は、状況打開のため自社の技術を生かした品質の高い化粧筆をつくり、化粧品会社に直接納品しようとしましたがうまくいきませんでした。そんなとき、米国で活躍している日本人メイクアップアーティストを訪ねました。そのアーティストは高本氏が持参した(株)白鳳堂の製品を高く評価しするとともに、販売先となる見込みのある会社をアドバイスしてくれました。紹介者もないままカナダのMAC者に製品見本を持ち込んだ結果、高い評価を受けOEM供給契約締結に成功しました。
その後、インターネットの活用による自社ブランド製品の直販方式を開発し、同社の化粧筆の品質がプロのメイクアップアーティストのみならずOLや主婦などの一般女性にも知られるようになり、化粧筆は国内シェアのトップを占めています。

手作業と量産化

(株)白鳳堂は、手作業による品質を確保しながら、化粧筆を量産しています。同社では、職人気質の手作業と製品の量産という一見すると矛盾する課題を作業内容を細分化することで解決しています。複数の職人が担当することで品質の維持と量産ができ、さらに不良品の発生率を大きく減少させています。

毛先を生かす

同社の化粧筆が他の追随を許さないのは、毛先を切りそろえるブラシではなく、筆先をそろえた、思い通りに化粧をするための道具として筆を作成するという理念に基づいているからです。
化粧品は毎年のように新製品が発表されています。これからも、新しい化粧品にふさわしい化粧筆を(株)白鳳堂は作り続けていくことでしょう。