子供に食べさせたい
愛知県高浜市に本社を置く「株式会社おとうふ工房いしかわ」は、国産大豆とにがりを使った豆腐を製造し、年間50億円以上の売上を毎年のように達成している会社です。同社の代表取締役が石川伸(いしかわのぶる)氏です。同氏は、1968年の生まれで大学卒業後、大手食品製造会社に数年勤務した後、「日本一の豆腐屋」を目標に実家の豆腐屋を継ぎました。
日本一の売上を目指し、当時の年商約3,000万を上回る5,000万円を投じて豆腐の製造単価を下げる大量生産のための設備を導入し、地元のスーパーに営業に回りました。しかし、はるかに単価の安い大手の会社の製品には太刀打ちできませんでした。そんなとき、自然食品店の相場よりはるかに高い豆腐の話を知人から聞き、試食すると自分がつくっている豆腐よりもおいしいという体験をしました。単価をさげるため輸入大豆とすまし粉(硫酸カルシウム)でつくるか昔ながらの国産大豆とにがりでつくるかの違いでした。
この経験から、一念発起し伝統を継承した製法による自分の子供に食べさせたい豆腐作りをはじめたことで、自然食を扱う店や生協などからに受注が増えていきました。
「旨い、安全、安心」
「自分の子供に食べさせたい」ため国産大豆とにがりのうまい豆腐をはじめとして、同社は次々と新製品の開発を続けています。豆腐のにおいが苦手な子がいると相談され、においを抑えながらうまみを増した「究極のきぬ」と「至高のもめん」を開発し、現在主力商品となっています。
豆腐生産の副産物としてでるおからは産業廃棄物に区分されており、処分は専門業者に委託しまければなりません。しかし、同社では発想を転換し、おからを廃棄物ではなく国産大豆を原料とする安全・安心な食材として活用しています。例えば、子供の歯がためによい固いお菓子「きらず揚げ」、「おからパウダー」、ドーナッツ、おからパンなどをつくり販売しています。この材料のおからを乾燥させるため、油揚げを揚げたときにでる廃油を利用するなど環境への配慮とコスト削減を実現しています。
大切にしたいこと
(株)おとうふ工房いしかわの企業理念に「日本の農業を応援したい」、「地球の環境を守りたい」、「昔からの味わいを大切にし、さらにそれを創造します」、「地域の皆さんに愛されたい」と4つの項目が掲げられています。
同社の大豆使用量は、年間2,000トンに達するそうです。安全で良質な国産大豆を確保するため農家と直接契約で大豆を仕入れ、「日本の農業を応援したい」という理念のもとに、同社の製品には大豆の裏作作物での麦を材料とするパンやドーナツをつくり販売し続けています。
また、地域を対象とする各種催し、子供を対象とする豆腐教室、社員の農業体験、契約農家の豆腐作り体験などの交流を積極的に行い地域貢献活動を積極的に行っています。
同社の企業理念を実践しながら、石川氏は社会貢献と(株)おとうふ工房いしかわの経営を両立させています。