株式会社元気アップつちゆ代表取締役社長 加藤勝一「再生エネルギーによる町おこし」

株式会社元気アップつちゆ代表取締役社長 加藤勝一

「再生エネルギーによる町おこし」

土湯温泉は、福島市南西部の山あいの温泉でが、高度経済成長期をピークに客足が減少し、東日本大震災以後は観光客が激減しました。
土湯温泉町で地熱発電と小規模水力発電を行っている、株式会社元気アップつちゆの代表取締役社長が加藤勝一氏です。
(株)元気アップつちゆは、土湯温泉町の復興と振興のため2012年に設立され、地元で生まれ育った加藤氏が社長に就任しました。

停電しない町を作る

加藤氏は東日本大震災の経験から「停電しない町を作る」ことを重要視しました。発電用の地域資源として着目したのが自然再生エネルギーでもある「温泉」と「豊かな水」です。温泉水をバイナリー発電に、地域内を流れる東鴉川(ひがしからすがわ)の水を小規模水力発電のエネルギーとして利用しています。

小水力発電所

土湯温泉町一帯が磐梯朝日国立公園内にあり、そこに流れる東鴉川は大正時代に小水力発電が行われており、遺跡や国指定有形文化財の堰堤(えんてい)も残っています。
2015年5月に運転を開始し、出力は140kW、年間に90万kWhの電力を供給でき、東北電力に売電され地域に収益をもたらしています。

日本初の水冷式バイナリー発電所

地熱発電にはいくつかの方式がありますが、ここで採用したバイナリー発電方式は、沸点の低い有機媒体と温泉の熱交換でつくった蒸気で発電し、蒸発した媒体は湧き水で冷却し液体に戻します。この方式は、温泉の温度がやや下がりますが自然環境に負担をかけずに発電できます。
2015年11月に発電を開始し、年間に約300万キロワット時の電力を供給し、小水力発電同様に売電され、地域に収益をもたらしています。

淡水海老(オニテナガエビ)の養殖

バイナリー発電後の温水を活用し、低コストで淡水海老の養殖事業をしています。オニテナガエビは半年ほどで15cm以上に成長し、食味も良く同社が経営する釣り堀やレストランで供され、新しい観光資源になっています。

再生・復興と新たなにぎわい

観光客が激減し、危機に陥った福島県土湯温泉は、温泉と豊かな水の活用に成功しました。
バイナリー発電施設・小規模水力発電所を活用し、再生可能エネルギーの体験学習施設の整備やエビの養殖など温泉以外の観光資源を作り出し、復興・再生にとどまらず新たな賑わいを起こし、観光客は、震災前の水準に戻りつつあります。